自分で学ぶ習慣や環境を提供したいと考えています

細川幸希 先生

昭和大学麻酔科 講師


細川先生は、麻酔科に回ってくる初期研修医や麻酔科専攻医の教育も担当されています。
 教育に関して気をつけている点があれば、教えてください。

 

何よりも職場の心理的安全性を大切にしています。初期研修医が疑問に感じたことを気軽に相談できる雰囲気を作りたいですし、今の昭和大学病院の麻酔科はそうした雰囲気になっていると思います。初期研修医と指導者の距離が近ければ、指導者が自身の教育を振り返るきっかけにもなります。
医局員みんなで初期研修医を育てよう!という医局になるよう心がけています。

麻酔科専攻医に関しては、必修で回る初期研修医に比べて求められるレベルが高くなりますよね。こちらに関しては、自学自習の姿勢と環境づくりを目指しています。医師となれば一生学び続けなければなりません。そのため、自分で学ぶ習慣や環境を提供したいと考えています。

環境づくりの例として「はたゼミ」、「脊髄幹麻酔学習プログラム」などがあります。
はたゼミは麻酔科専攻医自身による勉強会で、日々の麻酔で疑問に思ったことを自主的に調べ、学びを共有するものです。
脊髄幹麻酔学習プログラムは、脊髄幹麻酔を体系的に学ぶことを目的としています。シミュレーターで指導をうけ、しっかり練習したうえで患者さんに実践しようというものです。神経ブロック、中心静脈穿刺なども、体系的に学べる場所を整えていく予定です。


細川先生は産科麻酔をサブスペシャルティとされていますが、麻酔科のサブスペシャルティについてどのようにお考えですか?

 

手術室の麻酔は、執刀する外科とのやりとりが中心ですよね。
広く浅く、いろいろな科と関わりますが、手術室の麻酔がメインになるので、患者さんからのフィードバックはあまりないでしょう?あるとしても、術後回診時の「痛くないです」など、簡単なものになりがちです。
医師のモチベーションの原動力は、「ありがとうございます」「良くなって嬉しい!」といった患者さんからのフィードバックだと思います。患者さんのひと言で、明日も頑張ろうと思えるのですが、手術室ではそうした言葉を受け取る機会がないですよね。それで、麻酔科医は少しずつ疲れてしまうのではないかと思っています。

サブスペシャルティでは特定の科(産科麻酔なら産科)と密に仕事をしますので、その科の医師や患者さんからのフィードバックが得やすくなります。患者さんの気持ちを直接、時には助産師さんを通して、ポジティブなフィードバックというエネルギーをもらえるんです。そうした体験は、手術室での働き方を見直すことにもつながります。

麻酔科医の主戦場は手術室ですが、どんどん手術室の外に出たほうが良いと思っています。昭和大学には小児循環、ペインクリニック、産科麻酔、集中治療など、サブスペシャルティがそろっていますので、興味のある分野を見つけやすいと思いますよ。