Dr. William F. Urmey 区域麻酔レクチャー


こんにちは。初めまして。

今回、担当させていただくのは12年目(麻酔10年目)でペインクリニックと手術室で半々くらいずつ診療しております小林 玲音(レオン)です。

どうぞよろしくお願い致します。

 

まず初めに、私事で大変恐縮ではありますが、僕は神経ブロックが好きです。特に超音波ガイド下神経ブロックができる様になってからは、一つ一つのブロックが楽しくて仕方ありませんし、効果が出るといつも心の中でガッツポーズを取っています。

何故そんなに好きになってしまったかというと、1つにはれっきとした効果が認められるからです。たった1本の注射器とメピバカインがほんの数mlあるだけで、患者さんのQOLが格段にupします。そして、超音波があれば、局所麻酔薬の量や合併症などを減らせます。

 

下記はペインで、僕が超音波ガイド下星状神経節ブロックを行った例ですが、見事にホルネル兆候が出ています。(患者さんには了解を得ています。)

 

          スクリーンショット 2015-08-25 10.38.25(左SGB前)

          スクリーンショット 2015-08-25 10.38.13(左SGB後)

神経ブロックをただ好きだから行っているという訳でもありません。時代の流れとともに、超音波ガイド下神経ブロックも麻酔科医にとって「重要である」と認識されてきたからです。というのも、毎年のように学会のリフレッシャーコースの話題になりますし、専門医試験にも出題されます。世界的な麻酔の教科書であるミラーの教科書にも超音波画像がドシドシ記載されてきています。

そして実際に超音波ガイド下で腕神経叢ブロックを行ってみると、術後鎮痛方法としても非常に優れていて、これから外科医からも信頼されるかどうかの決め手の一つになりうるのではないかと思っています。

 

そんな、麻酔科医として必要とされてきている超音波ガイド下神経ブロック。その方法は日進月歩です。ですので、勉強を怠るとすぐに浦島太郎になってしまいます。

そして先日、区域麻酔学会が群馬で開かれました。

             スクリーンショット 2015-08-25 10.38.44

他の仕事があったため、僕は今年も行くことができず残念に思っていました。今年のブロックの話題がなんなのか、またもや聞き逃し、一つ遅れをとってしまいかねません。

ところがです。そう思っていた折、な、なんと演者のお一人であるWilliam F. Urmey先生が昭和大学病院に立ち寄って講演しに来て下さることになったのです。

世界の最先端に位置する先生が実際どんなブロックを行っているか知るという事は、大変貴重ですので、学会に行かずして学べるのは本当にラッキーとしかいいようがありません。これも、海外とのつながりが広い大嶽教授のお陰です。大嶽先生、ありがとうございます!!

               スクリーンショット 2015-08-25 10.38.56

Urmey先生は、これまで末梢神経刺激を用いた研究を行ってきた方です。下記はそのお仕事の一つです。

スクリーンショット 2015-08-25 10.39.18

「(腕神経叢を)神経刺激装置を用いて0.5mAで刺激した時に針の先端の位置は、筋収縮が得られた時とパレスセジア(異常感覚)が得られた時とではどう異なっているのだろう?」

 

以前は、ブロックを行う時、局所麻酔薬を入れるタイミングは「ビリっとした」などパレスセジアを患者さんが感じた時、でしたが、それでは神経を刺しているのではないか→神経損傷が起こってしまう!!ということが考えられていました。

そこで、パレスセジアを感じる前に(神経を刺さずして)、でも神経の近くで局所麻酔薬を注入する方法を、超音波と神経刺激装置を併用することで実現しようと試みられてきた訳ですが、Urmey先生も、そのお仕事をされていました。

 

その結果、産まれたのがBBraunのContiplex Cです。

 

Urmey先生のレクチャーでは、幾つかのブロックについてのお話がありました。

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一つ一つのブロックの方法は、成書を読んで頂く事として、今回はUrmey先生が教えてくださった持続腕神経叢ブロックとAdductor Canalブロック(伏在神経ブロック)のコツについて記載させて頂きます。

 

下記はC7レベルの超音波画像です。Urmey先生が出された超音波画像も下記のようなものでした。

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これは静止画ですが、しかしUrmey先生は神経刺激装置を使っているので実際は筋収縮のため画面が動いています。

いい超音波を使用すると、組織や神経が本当によく見えるので、神経刺激装置を使用しないという先生もおられるかとは思いますが、Urmey先生は使用しているとのこと。理由は沢山あるとは思いますが、ブロックの効果が確実ですし、神経損傷の危険が少ないからです。これが、ブロックがうまくいくコツの1つの様です。

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そして肩や手の手術は、全身麻酔を用いず、ブロックのみで手術しているそうです。

次にAdductor Canalブロック(伏在神経ブロック)です。このブロックは、膝関節置換術で行う大腿神経ブロックの次世代バージョンです。大腿神経ブロックですと、大腿四頭筋の筋力までブロックしてしまうので、それを温存しながら鎮痛を得る方法です。

         スクリーンショット 2015-08-25 10.40.11(Anesth Analg 2014;118:1370–7)

大切なのは、とにかく上記写真にあるように動脈を浮かばせることだと何度もおっしゃっていました。この動脈が浮かばないとブロックが不成功に終わってしまう様です。

僕自身は、まだ行ったことのないブロックなので、追って、4月よりうちに来てくださった上嶋浩順先生に直接ご指導頂こうと思っています。

超音波ガイド下神経ブロックの将来について、今回多くアピールさせていただきましたが、一つ難点があります。それは、麻酔と同様、多くの修練が必要だということです。いい術後鎮痛方法とは言っても、カテーテル挿入に何十分もかかっていては、本末転倒です。

当病院では、上嶋先生が来られてから1人ずつ強化月間を作ってレベルアップを図っています。

症例は十分にあるので、あるママさん麻酔科の先生は上嶋先生のご指導のもと、この2ヶ月で数十症例のブロックをこなしています。

            スクリーンショット 2015-08-25 10.40.24

下記は、これから専門医を目指す先生方へのメッセージと昭和の麻酔科の宣伝です。

自分もまだ言える段階ではないのですが、是非早い段階で多くのブロック症例も積んで欲しいと思います。

術後鎮痛方法は様々です。フェンタニルIVPCAも、当然使いこなせなければなりませんが、神経ブロックもIVPCAと同じくらいに使いこなせるようになってこそ専門医だと思います。

うちは、症例といい超音波とブロックを行う導入時間(外科医が待ってくれます)が潤沢にあります。

早くブロックを自分の技術としたい先生は、症例を積みにどんどん研修しに来て頂ければ幸いです。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

是非、一緒にお仕事できればと思います。

 小林玲音