PNBワークショップ報告


2014年11月15日、末梢神経ブロックの権威である名古屋大学医学部付属病院麻酔科の柴田康之先生にお越しいただき、今年3月に開院した昭和大学江東豊洲病院でPNB(末梢神経ブロック)ワークショップが開催されました。

PNB1 PNB2

術中・術後の疼痛管理には様々な方法がありますが、いずれも疼痛による精神的な負荷を取り除き、有害な身体的反応を抑えて合併症の発生を抑えること、術後はそれにより早期に離床を進める目的で行われます。

方法としては経口や静脈内などから全身投与を行うもの(非オピオイド、オピオイド)や、局所鎮痛(硬膜外麻酔や末梢神経ブロック)が挙げられます。手術の種類に合わせて、鎮痛効果が適切かつ副作用や合併症が最も少ないと考えられる方法で、それぞれの患者さんに最適な方法を麻酔科医が選択していきます。

末梢神経ブロック(PNB:peripheral nerve block)は、近年注目を集めている鎮痛法です。超音波技術の発達により、超音波ガイド下に解剖学的位置関係を同定(可視化)しながら、より正確で安全にブロックを施行できるようになりました。

また、局所鎮痛法として主軸となっていた硬膜外麻酔と比較すると、重篤な合併症のリスクは低いと考えられる為、幅広い症例に適用可能であり、近年広まってきている鎮痛法です。

勉強会では、柴田先生によるスライドを用いた講義で理解を深めた後に、3人の被験者の方にご協力いただきながらPNBの実技練習のお時間を設けていただきました。

PNB3

講義ではまず、こんな画像が提示されました。腕神経叢の解剖図です

私たちに投げかけられたのは「この図がしっかりと頭に入っていますか?」というお言葉。

先生が伝えたかったのは、「感覚と運動の神経支配領域をしっかりと理解し、起こりうる合併症の症状を詳細に理解してからブロックを行わなければ、合併症の評価や麻酔法の選択もできないしょう??」。これは基本的事項であり、かつとても重要なことでした。

より中枢で神経ブロックを行えば確実に広域で鎮痛を図ることは可能ですが、例えば整形外科では、術後に運動機能の評価が必要となる場合があります。確認したい筋肉の支配神経が中枢でブロックされていると、術後評価はできません。よってより選択的な神経ブロックなどほかの方法をとることが必要となります。

麻酔法の選択には、いくつもの要因が絡み合っていることを考慮しなければなりません。

  • Patient要因     個々の患者の全身状態の評価が必要
  • Surgeon要因    (上記のように)外科医との兼ね合いもある
  • Institution要因   ex.術後管理の中で、しっかりと合併症の評価をできるスタッフがいないと病棟管理として質が落ちるため問題となる

これらを踏まえて、目的がAnesthesia(麻酔)なのかAnalgasia(鎮痛)なのかに分けて考えることが重要です。

そんな話を交えながら、上肢手術に有用な腕神経叢ブロック、下肢手術に有用な腰神経叢ブロック・坐骨神経ブロック・大腿神経ブロックなどについて講義が進んでいきました。

実技の時間では、今回、参加者からの受講希望が多かった下肢手術に活用できる腰神経叢ブロックと、仙骨アプローチの坐骨神経ブロック、乳がんや胸壁の手術に活用できるPECS1・PECS2ブロックについても貴重なご指導をいただきました。

PNB4

柴田先生は末梢神経の同定の仕方、穿刺の位置決め、穿刺方法(よりよい体位やプローベの使い方)など、各段階に分けて丁寧に教えてくださいました。

いかに安全に施行するかは、しっかりとしたメルクマールをつけてから穿刺をすることにかかっているとのことで…まずは触診と計測により位置決めをすることが大切。腰椎や仙骨を触診してマーキングするときに、触る手に力を加えてしまうと皮膚にテンションがかかり、全く無意味な別のしるしをつけてしまいます。実際についつい私が位置を同定しようと骨を触ることに一生懸命になっていると、「そうするとずれてしまいますよ」「触るときは、紳士的に、そっとね。笑」そう柴田先生は仰っていました。

PNB5

大体の位置の予測をたてたら、超音波での同定に移ります。

慣れない超音波操作も、柴田先生が各ブースを回り丁寧に指導してくださいました。

PNB12

 

これが腰神経叢を同定しているところの写真です。

些細な質問にも快く答えてくださいました。

先生のご指導はとても丁寧であり、単に方法や知識の伝授だけでなく考え方のご指導などもしていただきました。麻酔科1年目の私にとっても大変わかりやすく興味が湧く内容でしたし、時にベテランの先生方も、「へえ…!」と感嘆するような知識もご教授いただけました。

勉強会のあとは、おいしいお食事とお酒で懇親会を開き交流を深めました。懇親会中のお話からも、柴田先生の温かく豊かな人間性を感じられ、このような方のご指導を受ける機会をいただけたことを大変嬉しく感じました。

PNB8

今回、柴田先生にお越しいただいたことで、より一層、PNBの理解が深まったとともに、PNBという領域の可能性を肌で感じることが出来ました。

この日のために遠方よりいらして下さった柴田先生、また、このような機会を作って下さった大嶽教授に深く御礼申し上げます。

PNB9

昭和大学の麻酔科では、今後も、世界に向けた素晴らしい研究や臨床を行っている先生方をお招きして勉強会を行っていく予定です。

麻酔科医の先生方も、麻酔に興味のある研修医のあなたも、将来どこへ進もうか迷っているあなたも、ぜひ機会があれば気軽に当医局に足を運んでみてください。

何か見えてくる・・・かもしれませんよ♪

植田 紗代